文章とともに体言の箇所が与えられ, その体言において「も」を使うべきか否かを推定する. 課題の文章は既存の文章を用い, 「も」を使うかどうかを わからなくした状態でその文章を与えて, 「も」を使うかどうかを推定する. 「も」の使用についての推定結果が, 元の文章での「も」の実際の使用と同じであれば正解と判定する.
具体的にどういう箇所で上記推定をするとよいかを調べるために, 助詞の「も」の直前の格助詞の個数を計数した.また, 格助詞を伴わない助詞「も」についても, 格の個数を計数した. 京大コーパス3.0の毎日新聞の1995年1月1日から9日までの記事での 出現を調べたところ, 表3.1に示すようになった. 格助詞の「に」の後に「も」が生じることが多いことがわかった. また, 京大コーパス4.0の毎日新聞の1995年1月1日から7日までの記事で 格助詞を伴わない助詞「も」の格を調べたところ, 表3.2に示すようにガ格とヲ格が多いことがわかった.
そこで, 二格, ガ格, ヲ格の箇所に, 「も」をつけるべきかどうかを 判定することとする.
二格の箇所での課題では以下のものを考える. 文中の「に」「にも」である箇所を抜き出し, その箇所が「に」「にも」のどちらであるかはわからないようにして, 元の文章でその箇所が「に」「にも」のいずれであるかを推定する. この課題を「に」「にも」の使い分け問題と呼ぶことにする.
ガ格, ヲ格の箇所では, 「も」を使う際 格助詞を使わずに単に「も」だけを使う場合が多い. 例えば, 「太郎も来た」という場合の「も」はガ格(太郎が来た)であり, 「本も持っている」という場合の「も」はヲ格(本を持っている)である. 以下, これらの場合の「も」をそれぞれ「がも」「をも」 3.1と表現する.
ガ格, ヲ格の箇所での課題では以下のものを考える. 文中の「が」「がも」(または「を」「をも」)である箇所を抜き出し, その箇所が「が」「がも」(または「を」「をも」)のどちらであるかはわからないようにして, 元の文章でその箇所が「が」「がも」(または「を」「をも」)のいずれであるかを推定する. この課題を「が」「がも」(または「を」「をも」)の使い分け問題と呼ぶことにする.
実際の文では, 「がも」「をも」は「も」と記載されているだけで, 「がも」なのか「をも」なのかはわからない. しかし, ここでは「も」を使うか否かのみを推定するととして, その体言の格が何であるかはわかっているものとする. そこで, 「が」か「がも」かの推定, または, 「を」か「をも」かの推定を扱うものである.
本論文では, 「に」「にも」, 「が」「がも」, 「を」「をも」の 3つの使い分け問題を扱う.
以下に, 「が」と「がも」の使い分け問題の例を示す.
太郎と花子は本屋へ行きました. その時太郎はお金を沢山持っていました. また, 花子も同様にお金を沢山持っていました. |
上記の文章で一番最後の文の「花子も」の助詞「も」を推定箇所とした場合, 一番最後の文は「また, 花子X同様にお金を沢山持っていました. 」とする. この文のXの部分に入る助詞として, 「が」と「がも」のどちらを使用するのが元の文通りであるかの推定を行う.