次へ:
評価
上へ:
結合価文法による係り受け解析
戻る:
解析の流れ
比較方法
2.5節の3.の比較は、基本的に結合価パターンの適合性に準じて行う。ただし、標本中では「」に囲われる名詞は動詞節の係り先となっているので、その場合はパターンを使用しない。また、パターンが適用できない場合は意味属性で判断する。具体的には以下の7つの段階に分けることができる。
(1)特殊な場合
名詞A又はBに「」もしくは""で囲われている場合、動詞節の係り先と判断する。
例2:地方自治を
考える
「列島ロジー」
の
第一部
名詞Aの「列島ロジー」が記号「」で囲われているため、「考える」は「列島ロジー」に係ると判断する。
(2)結合価パターン
例文が結合価パターンに適合するか比較する。
例3:寄付金を
扱う
自治体
の
巨大イベント
「を格」の格要素「寄付金」の意味属性は(金銭)
名詞Aの「自治体」の意味属性は(行政機関)
名詞Bの「イベント」の意味属性は(催し)
例3の「扱う」のパターンはP2になる。
P2:
(主体,機械)が
(*)を扱う
の意味属性に内包されるのは名詞Aの 方なので、「扱う」は「自治体」に係ると判断する。
(3)適合パターンが複数存在し格要素数が異なる場合
当てはまる結合価パターンが複数存在することもある。その場合、パター ンに含まれる格要素数が多い方の結果を優先する。例えばP3とP4の両方で当てはまるとする。
P3:
が
に〜する
P4:
が
を
に〜する
この場合、格要素が3つある後者の評価を結果とする。
(4)適合パターンが複数存在し格要素数が同じ場合
当てはまる結合価パターンが複数存在し、格要素数が同じ場合は、名詞A又はBに対応する格要素の種類に応じて優先度を決め、優先度の高い方を結果とする。格要素の種類別優先度を図2に示す。
が > を に > で へ > の > と から まで より
図2:格要素の優先度
格要素の優先度は、標本データでの頻出度に応じて作成した。例えばP5とP6の両方のパターンに当てはまるとする。
P5:
が
に〜する
P6:
が
で〜する
名詞A又はBが
に対応していたとすると、「に格」の方が「で格」よりも優先度が高いので、前者の評価を結果とする。
(5)省略を含むパターン
元の結合価パターンから
(が格)を除いたパターンと比較する。
例4:
収容された
ロシア兵捕虜
の
姿
名詞Aの「捕虜」の意味属性は(囚人・捕虜)
名詞Bの「姿」の意味属性は(形,姿)
例4の「収容する」のパターンで(1)〜(4)の方法に当てはまらず、P7から
を省略したパターンに当てはまる。
P7:
(施設)が
(主体,動物)を収容する
の意味属性に内包されるのは名詞Aの方なので、「収容する」は「捕虜」に係ると判断する。
(6)全ての意味属性が*のパターン
意味属性が全て受けつけるパターンと比較する。
例5:企業収益を
維持する
経営トップ
の
姿勢
「を格」の格要素「収益」の意味属性は(利益)
名詞Aの「トップ」の意味属性は(等級)
名詞Bの「姿勢」の意味属性は(態度)
例5では「維持する」のパターンで(1)〜(5)の方法にあてはまらず、P8に当てはまる。
P8:
(*)が
(*)を維持する
、
ともに意味属性が全て受けつける属性なので、「維持する」は「トップ」、「姿勢」の 両方に係ると判断する。
(7)パターンの
の意味属性と名詞A、Bの意味属性が適合
結合価パターンにおいて、
の意味属性から順に名詞A、Bの意味属性と比較していく。比較 する
の格要素の種類によって優先度を決めておき、より優先度の高い格要素での評 価を結果として採用する。格要素の種類での優先度は(4)と同様であ る。
例えば「
が
から
に〜する」において、「に格」
で名詞Bが当てはまったら、「から格」
で名詞Aが当てはまっても、「に格」の方が優先度が高いので、結果は名詞Bに 係ると判断する。
例6:視察に
行く
議員
の
選考方法
「に格」の格要素「視察」の意味属性は(検査)
名詞Aの「議員」の意味属性は(政治家,人<地位>)
名詞Bの「方法」の意味属性は(方法)
例6では「行く」の結合価パターンは(1)〜(6)の方法に当てはまらないので、各結合価パターンについて、
の意味属性と名詞A、Bの意味 属性を比較する。この結果、P9が選択される。
P9:
(主体,動物)が
(道路)を行く
に名詞Aが内包され、「が格」は最優先なので、「行く」 は「議員」に係ると判断する。
比較評価の優先度は(1)が最も高く、(7)が最も低い。(1)の評価から順に行い、比 較評価での結果が出た時点で解析は終了し、以降の比較評 価はスキップする。
平成14年4月4日