一昨年の卒論の研究で竹内[1]は、日本語複文の意味的構造を英語の構造と 対比して文型化することによって翻訳精度の向上を期待した。そこで、「内と外 の関係」「底の名詞を修飾する述部の意味的完結性(陳述度)」「底の名詞の抽象 度」を考慮して日本語複文の分類を行った。以下にそれらについて説明する。
寺村[2]の「内と外の関係」は英語の「関係節」と「同格節」への対応に用 いられる。図1に示すように、底の名詞と修飾部の間に格関係を有す るものを「内の関係」と呼び、これは、英語の「関係節」に対応す る。そして、格関係を含まず、修飾部が底の名詞の具体的陳述であ るものを「外の関係」と呼び、これは、英語の「同格節」に対応す る。
「陳述度」は英語の「節」と「句」への対応に用いられる。陳述度とは図2のよ うに「文としてのまとまり、完結性の度合。文であるか、ないとす れば文にどれほど近いかを表すもの。」であり、文らしさを表すも のである。竹内[1]は寺村[2]の5段階の陳述度の設定に、 陳述度1を現在形、過去形でaとbに分け、また陳述度2に「〜できる」 「〜ない」を付加した図3を分類の基準に用いることで、英語の 「節」と「句」に分類する上での、精度向上を図った。
「底の名詞の抽象度」は「外の関係」において「同格節」と「前置詞句」に分類 するために「陳述度」と共に用いられ、図4の「噂」のように抽象度 の高いものほど五感ではとらえにくいものとなっている。また、抽 象度による分類を図5に示す。
以上の考えに基づき竹内[1]は分類表を作成した。以下に竹内[1]が作 成した分類表に手を加えたもの表1を示す。
表1では、まず縦方向を「内と外の関係」、横方向を「修飾部の陳述度」として4
つに分類し、さらに、「内の関係」については格関係に基づき、英語の前置詞に
対応させ、12に下位分類し、「外の関係」については「底の名詞の抽象度」と「修飾
部の陳述度」に基づき4つに下位分類する。