例16:逃亡した男は地方で生き延びている。
対訳16:The man who escaped is surviving in the countryside.
ALT訳16:The man who escaped has survived in a district.
例17:私は濡れた服をストーブのそばで乾かした。
対訳17:I dried my wet clothes next to the heater.
ALT訳17:I dried with the buckwheat noodle of a heater clothes that got wet.
文中で対象の名詞が,パターンの格要素以外で用いられている場合には,結合
価文法による訳し分けはできない.パターンは用言と格要素の意味的関係が記
述されているので,パターンに含まれない格要素の名詞については,意味属性
によって訳語の絞り込みができない.
例16では,パターン「
1(主体,動物)が生き延びる」が適用されている.しか
し対象の名詞「地方」を含む格要素「地方で」は,パターンに含まれていない.
したがってこの場合,パターンに記述されている意味属性によって訳語を絞り
込むことができない.
この問題も パターンが動詞の訳し分けを目的に開発されたものであるということが原因 と考えられる.現在のパターンは訳し分けにおいて,最低限必要な格(必須格)と意味属 性しか定義していない.よって動詞の訳し分けの観点から重要でない格の名詞 にはパターンが適用できない.
この問題の解決の可能性としては,不足している格をパターンに追加する方法が挙げられ
る.例16ではパターンを「
1(主体,動物)が
2(場所)で生き延びる」とす
れば名詞『地方』も意味属性による制約を受け,訳語を絞り込むことができる
ようになると考える.しかし,同じように名詞の訳し分けのために他のパターンにも格を追加していくと,格
の増加によりパターンが複雑化する.それによりパターンの誤選
択が増え,動詞の訳し分けが困難になると考えられる.
よって格要素を追加する際
に必須格ではなく,任意格として追加する方法を考える.任意格は,パターン
選択の際には考慮に入れず,パターンが決まった後,例文に任意格に対応する
格が有ればその格に対して適用する.
例16の例ではパターンを「
1(主体,動物)が[
2(場所)で]生き延びる」
([]内は任意格とする)とし,任意格[
2(場所)で]はパターン選択の際には考
慮に入れない.そしてこのパターンが選択された後,格『地方で』に任意格
[
2(場所)で]が当たるので,名詞『地方』を意味属性<場所>で制約する.
以上の方法で今後,パターンによって現在よりも名詞の訳語選択の精度を高め ることができると考える.